言葉やら人やら私について

歴史と言葉と音楽を愛する学生が、その時々で感じたことや学んだことを忘備録的に書き留めていくブログです。テーマは散文的でありますが、一つの記事できちんと完結するよう心掛けます。

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

「人間はな」 言ってから、劉邦は言葉をとぎらせた。人が悲しんでいるときに顔をすり寄せてきて、お悲しいことでございましょう、とおっかぶせてくる奴ほどこまった手合いはない、と言いたかった。「こういうときにはな」劉邦はまた黙った。何をいっていいの…

あさきよめ

あさきよめ 室生犀星 悔のない一日をおくることも 容易ならざる光栄である。 時間一杯に多くのものを読み、 何かを心に書きつらね、 少しもたるみなくけふを暮さうと、 身がまへてほゐるけれど、 鈍間(のろま)な生涯がのろのろと、 山また山の彼方に続いて…

ピエロとピエレット

月の光の照る辻にピエロさびしく立ちにけり ピエロの姿白ければ月の光に濡れにけり あたりしみじみ見まはせどコロンビイヌの影もなし あまりに事のかなしさにピエロは涙ながしけり 「月夜」(堀口大学『月光とピエロ』より) ペール・ラシェーズ墓地。それは…

劉邦になりたかった男

「高祖ハ、沛ノ豊邑ノ中陽里ノ人ナリ。姓ハ劉氏。字ハ季。父ハ太公ト曰ヒ、母ハ劉媼ト曰フ。」 これは、司馬遷の著にして中国二十四史の第一、『史記』に記された漢の始祖、劉邦について述べられた一節である。字とはすなわち名前のことであるが、「季」とは…

中国近代郵政を担った男

華夷思想。それは周王朝発祥の黄河中域部から拡大された中原、すなわち中華を治める中国の論理であった。世界を我々と我々以外、「華」と「夷」に分け前者の威光を知らしめることでその文化を波及させるというコスモロジカル的価値観は、この東アジア世界を…

ソグド人はどこへ流れていったのか

紀元前六世紀からその存在が確認され、シルクロードの経済商業圏の中心を担っていたソグド人は、現在ではタジキスタンのヤグノーブ渓谷に住む三千ばかりの住民がその末裔といわれ、彼らに話されるヤグノーブ語がソグド語の名残だという。ソグド人は一体どこ…

死者の贈り物

まっすぐに生きるべきだと、思っていた。間違っていた。ひとは曲がった木のように生きる。きみはそのことに気づいていたか? これは詩人、長田弘(1939/11/10〜2015/05/03)の作品「イツカ、向こうで」の一節である。詩集『死者の贈り物』(2003年、みすず書…

知命

「知命」 茨木のり子 他のひとがやってきてこの小包の紐 どうしたらほどけるかしらと言う 他のひとがやってきてはこんがらがった糸の束なんとかしてよ と言う 鋏(はさみ)で切れいと進言するが肯(がえん)じない仕方なく手伝う もそもそと生きているよしみにこ…

はじめに

WONJUNです。現在マレーシアの大学の修士課程にいます。あるグループ中で書いたコラムをきちんと残して置きたくて始めました。レスポンスを求めるわけでもなく、ただ目に留まる人がいて何か感じてくれればいいというだけです。歴史や言葉の世界を通じて、私…